拉致被害者横田めぐみの父の横田滋さんが訃報を受けて北朝鮮人権人道ネットワークとして緊急声明を出したいと思います。
「横田滋氏の訃報に接して」
6月5日午後、横田滋氏が亡くなられたとの報に接した。数年前から体調を崩して入院されていたと聞いていたので、いつかはこういう日がやってくるとは漠然と思っていたものの、実際に哀しい現実を突きつけられると言葉にならないくらい残念でならない。心からお悔やみを申し上げたい。
滋氏が娘のめぐみさんに対する愛情の深さや強さは、幾多の講演会や記者会見等で広く国民に浸透し、ご夫妻がめぐみさんだけでなく全ての拉致被害者の救出を願う一途な気持ちは国民共通の願いとなり、拉致問題ばかりでなく我が国の北朝鮮政策に与えてきた影響力は計り知れないものがあると思う。
滋氏は、ただ拉致問題だけが解決すればそれで良いとは考えておらず、ストックホルム合意に示された人道問題にも深い関心を示し、それらの問題の解決のために行動してきたことを我々はよく知っている。視野が広く、度量の大きかったことに敬意を表したい。
拉致問題は、北朝鮮が意図的に引き起こした国家犯罪であることは論を待たない。その責任は北朝鮮にあることは明白であっても、その主張を頑なに言い通すことが問題解決の最短コースになると思えないことは、日朝平壌宣言以降の歴史が物語っている。
滋氏が拉致問題解決のために注いできた努力と信念を無駄にしないために我々がいまできることは、北朝鮮を交渉のテーブルに引き出し、ストックホルム合意に明記された合意事項に則り、具体的かつ現実的施策を前進させることではないだろうか。
拉致被害者、行方不明者だけでなく、ストックホルム合意に明記された全ての問題の家族・親族は日一日と老いている。一日も早い解決を実現するためには、現実的な交渉を北朝鮮との間で継続していくしかない。滋氏の訃報に接し、我々はその想いを新たにした。
滋氏のご冥福を心からお祈りするとともに、悲嘆に暮れている妻・早紀江氏が一日も早く心穏やかな日々を取り戻すことを願っている。
令和2年(2020年)6月5日
北朝鮮人権人道ネットワーク(NKHNW)
代表 陶久敏郎